家庭のこと(4)

亭主関白の続き。


実家はモノには困らない家庭であった。
欲しいものは言えばたいてい買ってもらえた。父の気に入る形で。
というのは、母や私(長男はわからん)が必要なモノ・欲しいモノがあると一家の財布である父にいい、値段交渉し、それで買ってもいいとなると父と一緒にモノを見に行き、陳列棚の中から父が納得したものを選ぶからである。
さすがに細かすぎるモノや女性服などは金額の上限を決められただけで父が選びはしなかったが、買い物が済むと『見せてみろ』『いくらだった』『おつり』『お礼のことば』と、ひととおりの儀式をする。そこで披露した品物が父の気に入らないと、彼にとっては恨みと化すらしく、後々まで嫌味を言われる。私が文房具などで父の気にいらないモノを買ってくると速攻母にえげつない嫌味を言われる(または母に分の悪いケンカになる)ので、責任重大なのだった。


しかしひとたび必要なモノが発生すると彼は凄まじい責任感を持って買い付けてくれる。夜でもいつでも、労を惜しまずお店に連れて行ってくれた。「足りない」なんて言わせないぞという気迫がすばらしかった。おとーさんたいへんモノに執着していたのねと、今はただ思う。


はずかしながら私は、子供時代に決まった小遣いをもらっていたか、覚えていない。小遣いをためて内緒で背伸びチックな品物を買うという経験をしたことがない。そういう品物は、父の頭の台帳に「ぐみの背伸びしたい年頃の贅沢品」という名目をつけられて載ってしまう運命にあった。複雑。





アルバイトというものを知ってから、父の台帳に載らないモノを狂ったように買えた。あれは、気持ちよかったなあ

【注意!】狂い買いは危険な行為です。やりすぎに注意しましょう。