家庭のこと(3)

私の父と母は、結婚した当初と現在では関係性が微妙に変わっている。結婚当初〓子供が成人するまでは、いわゆる亭主関白の夫婦だった。


母は毎月決まった生活費のことしか知らない。父の給料がどのくらいか聞こうとすると「探りを入れた」だけで激怒するので、父のほうから『ボーナス●万でたぞー』とか自慢してこない限りは何も知ることができない。私は『お父さんにボーナスいくら出たか聞きなさい』という冗談交じりの指令を母から受けたことがあるが、子供が探りをいれて却って母が父の逆鱗にふれたことが、あるかもしれない。私だって『何でそんなことを聞くんだ!』と怒鳴られた気がする。詳しい顛末は覚えていないが、お父さんはワカラナイ人だから私と母の秘密ね、っていう甘美さは覚えている。(アーーー何が甘美だ。でも当時からすこうしおかしいと感じていた。)
そのようにお金のことをガッチリ管理されていた母は、家の誰がどういう保険に入っていて、父がどういうお金の分配をしているのか、どのくらい資産があるのか、まったく知らない。多分習慣となっていて今も知らないだろう。


母から聞く結婚当初の父のエピソードは、背筋の冷たくなるものばかりだ。作った料理に文句を言う・怒鳴る・テーブルをひっくり返す・皿を投げつけるとか、探し物が見つからないとドコニシマッターといって家中の引き出しをわざとぶちまけるとか、長男のしつけに不安を感じた母が長男をどこかの塾に通わせてみようとしたところ、『おまえは自分の子供を他人に育てさせるのか』と切れてその案を断ったとか。長男の件は、それを母だけの責任にしたという点が、凶暴だ。母に責任を持たせるんなら、母の案をバックアップするべきだし、母の案にそんな剣幕で駄目だしするなら、父が目を離さず育てるべきだ。そこで仕事が忙しいから無理というのでは、じゃあ何で子どもを作ったんですかということになる。長男はそこで一旦捨てられているのかもしれない。私の知ったことではないが。


つづく。