虐待の記憶(5)

長男による性虐待に一度だけ父が介入してきたことがある。
父が長男を回復させようと努力していた頃、長男が父に私への性的いたずら(←ここはあえて「いたずら」と表記)を打ち明けたらしいのだ。それを聞いて父が私に『それらしいことがあったか』と尋ねてきたというわけだ。


私はイエスと答えはしたものの、受けていた暴力がいったいどんなものか自分でも良く把握できていない上、いいなりだったという恥の気持ちもあったので被害内容をこと細かには訴えられなかった。そして父も細かくは聞いてこなかった


エスを受けて父がどう返事をしてきたかは覚えていない。ただ、ことが明るみに出て、私はそのとき実にうれしかった。もう怖い目に遭わなくて済むか、格段に逃げやすくなる(=親が守ってくれる)と思ったのだ。


しかし、喜んだのは大間違いだった。


その後も兄は平気で私を虐待したし、以前より呼び出す手口や口止めが巧妙になって恐怖が増したくらいだ。
両親が何か改善してくれたかは私には全然わからなかった。


もしかしたら父は母に「いたずら」の事実を伝えていなかったのではないか?と思う。昼間家にいない父だけ知っていても改善されないのは当たり前だから。そして、奴の手口が巧妙化したのは父が長男に「ぐみにもうやっていないだろうな」とプレッシャーを与えていたからではないのか?


とりあえずの私ほうにはそれ以上の事実確認は無かったし、私と両親の間で「いたずら」への認識について語られたこともこれ以降一切無い。