家庭のこと(6)

私が成人になったころ性虐待のことでひどいフラッシュバックを起こし、もう家にいられないと思ったので一人暮らしをはじめることにした。(ヒステリックな性格に見えただろうなあ。)


私がえらい剣幕で家を離れたあとの実家は、長男がどんどん幅を利かせ陰惨な感じになっていったらしい。私が長男の暴力を抑えていたからではなく、両親が年を取りパワーが落ちたからだ。一人暮らしといっても同じ市内なので両親は私を訪ねることを楽しみにするようになった。それはもう、家にいたときよりも一緒に行動してしまうくらい。
そのころ実家は長男の暴力の嵐で(今に始まったことではないが)、襖は破れタイルははがれ、母などは危険を避けるため風呂にもはいれず、台所に立てなくなることも多かったらしい。そのための外食、そのための銭湯通いに、ご相伴与かったのだ。両親はそれらの行動を楽しんでいる風を装っていたが、とんでもない。一人暮らしの私のことが心配で訪ねる風を装っていたが、とんでもない。両親はだいぶ、無理をしていただろうと思う。今も。


父と母の間柄は、明らかに前と違っていた。なんと形容していいかわからないが、絆が深くなったように見える。 子供が成人したからとか年を取ったからというせいもあろうが、わたしは、「一緒に逃げる」という体験をしたからだと思っている。

父と母の連帯意識が、即、絆になるとは考えられない。逃避は飽くまでも一時しのぎなのだ。