ダメの烙印

私が大学を中退したことは、私の親にとってどのような衝撃だったのだろう。
からしてみれば“これ以上一分たりとも成長の時間を無駄にしてはいけない気がする”という自己認識が出来てきたごく自然の流れでの中退だったのだが、親にとってはとても馬鹿馬鹿しいドロップアウトだっただろう。

ドロップアウトしたと思ったからこそ、両親は私を匿う気持ちを強くしたのかもしれない。前例として、彼らは長男がダメ人間だと思った途端餌を与え物を与え長男の意向に従うようになった。ダメ人間を恐れる気持ちと世間に出さずに家の中で極力済ませたいという願いが、見え隠れするではないか。2人目の私が微妙にドロップアウトした時点で、彼らの私への過干渉は前例に倣うように多少形を変えたはずである。


父は自分以外のわりとすべてを「ダメだなあ」と言いたがる人間で*1、自分の妻のことは家族のいる中で、長男のことも本人のいないときに「ダメだなあ」と唾棄するが如く評していた。私は父にあまり「ダメだなあ」と言われて育たなかったが(というかあまり言葉をかけられた記憶がない)、見えないところでは言われていたのだろう。

父が私のことを面と向ってダメだなあというようになったのは、私が成人する頃からである。それは丁度、私が大学の授業に出なくなった頃と重なる。果たして父は私のドロップアウトっぷりに対して「ダメだなあ」と言うようになったのか、それとも成人間近の私を一人前として扱って*2「こいつも俺と比べればやっぱりダメだなあ」と評したのだろうか。時期が微妙でよくわからない(し、実は大した差ではない)。

私が晴れて実家の姓を捨てると決めたとき、ヘソオーさんの両親と私の両親とを初めて(最初で最後だったりして)引き合わせて食事をした。父はその席で「こいつ(ぐみ)はねえ、大成*3すると思ったんだがねえ、なぜダメになったか不思議でね」などということを口走っていた。もう突っ込むところがありすぎて口アングリな一言だったが、その場を茶化すのに必死だった事が思い出深い。


途中から主旨が変わって父のことばかりになってしまった。

*1:私が知っているのは祖母(父の母)と司馬遼太郎長嶋茂雄はダメじゃないという事くらい

*2:一人前といっても、彼にとっての一人前の女性とは結局のところ子供産んでナンボ、のようなものらしい。昨今の女性は技術を身に付けて自立して欲しい云々と奇麗事は言っていたが。そして奇麗事なのは彼にとってだけである。私は自分の母親の家事仕事に関して「自立していない」とは思わない

*3:?うろ覚え