合わないとき

浦島さんよりトラバをいただいたので、叔父と父の事をひとつ。

父の兄弟は戦中戦後の生まれで、人口政策に則り人数が多い。叔父は末っ子ではないが下のほうの年齢で、彼ら兄弟が揃うと必ず話す思い出話にもあまり登場回数が無かったと記憶する。

思い出話でよく語られるのは私の父だ。父は数々の武勇伝を持ち自ら情熱的に語るので他を圧倒する。父の実家で最も強い存在だった祖母も父の腕白には甘かったという。いまだに父に面と向って苦言を言えるのは家を継いだ伯父(私の父の兄)だけで、父は伯父から苦言を受けると却って意地を張って我を押し通す。

私は自分の父が家でも偉いし祖母の家でも一番偉いので本当に偉い人なんだと思っていた。だが一歩引いて考えてみると、確かに父はリーダーシップを様々な環境下で発揮できる優れ者なんだけど、加減をイマイチ心得ておらず支配力が強すぎる→独善的になっても気が付かない、という欠点を持つ。
そのような父が母に対して深刻な(飽くまでも深刻な。)DVをするまでには至らなかったのは、外の世界で発散してきた事が大きいと思う。小さい頃から実家で学校で近所で、結婚してからは家庭で職場で、いつもいつも大将であり正義を貫いた*1という充足感が父を支えたのだと思う。




父の弟たちは大人しい。末っ子だけが"やや"やんちゃだが頭打ちな感じ。父と一緒にいると大抵の人は大人しくなるし弟なら年齢差があってなおさら大人しくもなろうが、件の叔父はもともと血の気の多い性質ではなかったようだ。そういう人間のに私の父を礼賛しがちな環境はそぐわなかったのかもしれない。

いま叔父の態度に興味がわくのは、叔父は父が実家でも手に負えない人だということを暗に態度で示しているような気がするからだ。(飽くまでも妄想だが)。周りがこぞって父に合わせているけれども、合わないからといって合わせる必要はないのだ。血縁関係でも。

そして最も不思議なのは、叔父以外の殆どの人が、どうしてそうも父の意思に合わせているのかという点だ。父は学歴や職業スキルや収入が兄弟の中でそれほどに抜きん出ていいるわけでもない。祖母のお気に入りではあったが家督を継いでいるわけでもない。ただ腕白で正義漢で胆力があるんだとかいう定評である。って、この人物像まるで漫画のヒーローじゃないですか。ヒーロー像に弱いというのはみんなの共通の弱点だし、父はそういう宣伝を自らに課して生きているだけなのかもしれない。

*1:父の正義話は多い。私はあまり内容を理解していないが。